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第21回新渡戸カレッジメンターフォーラムを開催しました

投稿日: 2025-12-23

2025年12月13日(土)、高等教育推進機構において「第21回新渡戸カレッジメンターフォーラム」が開催されました。今回のフォーラムは、1876年の開校から2026年で150周年を迎える北海道大学の「北海道大学創基150周年記念事業」の一環として行われ、非常に意義深いものとなりました。

新渡戸カレッジオナーズプログラムの大学院カリキュラムでは、さまざまな分野の第一線で活躍している方々を「メンター」として委嘱しています。メンターは、学生が将来のキャリアパスを模索し、グローバルな視野を広げ、様々なネットワークを構築することを支援する重要な役割を担っています。

親しみやすいロールモデルであるメンターとの交流を通じて、学生は大学院修了後の人生設計について深く、客観的に考える機会を得ることができます。年2回開催されるこのフォーラムは、大学における学術研究と実社会の多様な現実をつなぐ、不可欠な架け橋となっています。

メンターレクチャー:「Unlocking Resilience」

今回のフォーラムは「Unlocking Resilience: Lessons Learned from Setbacks」をメインテーマに掲げて開催されました。5名のメンターが、成功に至るまでの道のりで直面した数々の困難や、失敗という経験から得たかけがえのない教訓について、自身の歩んできたストーリーを交えて語りました。

新渡戸カレッジメンターの紹介

黒田 垂歩(ブラックフィールズ コンサルティング CEO

幼少期の原体験から、ハーバード大学医学部などの研究機関で直面したキャリア上の挫折に至るまで、自身の人生を形作った6つの逆境の物語を語りました 。レジリエンスの本質とは、今ある痛みを正しく認識し、長期的な視点を持つことにあると強調しました 。また、苦難を乗り越える中で育まれる深い共感こそが、人々を結びつける強力な架け橋になると述べました 。

佐賀 美紅(株式会社日立製作所)

「Game Over/Try Again」というゲームになぞらえた独創的なテーマを用い、オンライン形式で登壇しました。通訳・翻訳のバックグラウンドからグローバル人事(HR)のプロフェッショナルへと至るまでの自身のキャリアの変遷について語りました。さらに、学生に向けてレジリエンスを構築するためのフレームワークを紹介しました。それは、「Reflect」、「Prepare」、そして「Break Down」という3つの指針です。

中原 拓 (メタジェンセラピューティクス株式会社 代表取締役社長)

アカデミアからバイオテック業界へ転身した際に直面した「現実」について語りました。米国での事業失敗の挫折からいかに「透明」であることの大切さを学んだかを説明しました。個人のエゴを捨て、ひたすらミッション(使命)にのみ集中することで、成功を一個人のものではなく、関わる人々全員で分かち合う「集団としての成果」へと変えていくという、自身の哲学を学生たちに伝えました。

和田 義明(前衆議院議員

キャリアの中で直面した、数々の経験や挫折について語りました。ウィンストン・チャーチルの言葉を引用し「もし地獄の真っ只中にいるのなら、そのまま突き進め(歩みを止めるな)!」という不屈の決意が込められた言葉を学生に贈りました。また、常に「プランB」を念頭に置いておくべきであるという、極めて実践的なアドバイスを強調しました。

藤井 幸大 (サンマルコ食品株式会社 代表取締役社長)

自身の体重を50kg以上減量した経験を基に、日本人の死因の約6割を占める生活習慣病という社会課題の解決を使命として掲げていると語りました。レジリエンスとは自分の強みを深く理解し、その独自性と社会の切実なニーズが交わる点、すなわち「クロスポイント」を見出すことから生まれると強調しました。社会が求める価値と自分が提供できる価値の双方を満たすことで、新たな事業や取り組みが生まれていくことの重要性を説きました。

メンター交流会:外の世界へとつながる扉

フォーラムの後半では、新渡戸カレッジオナーズプログラム大学院カリキュラムの学生のみを対象としたメンター交流会が開催されました。会場は活発な議論が交わされる一方で、終始なごやかな雰囲気に包まれていました。日々の大半を研究室などのアカデミックな環境で過ごす大学院生にとって、この交流会は自らの「研究という殻」から一歩外の世界へ踏み出す、稀有で価値ある機会となりました。

交流会は、異なる社会的背景を持つ方々と率直に対話できる場となりました。学生たちは、具体的なキャリアアドバイスだけでなく、メンターの方々のその場にいるからこそ伝わる臨場感に触れ、いかにして聴衆を惹きつけるか、メッセージをどう組み立てるか、そして独自の経験をどのように共有するかといった、生きた姿勢を学びました。 人生がたとえ厳しい映画の脚本のようなものであっても、自らを見つめ直し、レジリエンス(しなやかな強さ)を発揮することで、鮮やかに生き抜く力が自分たちには備わっている――交流会は、そのことを再認識する重要な機会となりました。

参加した学生たちは、ここで得た数多くの知見が、将来のキャリアパスを切り拓く上での大切な「拠り所」となり、かけがえのないものだと感じたようです。

本学創基150周年を祝う大きな節目において、本フォーラムにご参加いただいたメンターおよび学生の皆様に、心より感謝申し上げます。