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新渡戸カレッジ履修生・修了生、フェロー・メンターからのメッセージです。

広い世界の舞台で 勝ち抜くことができる人に

井上 修平
投稿日: 2017-08-24

プロフィール

井上 修平(いのうえ しゅうへい)さん

元双日株式会社顧問
シンフォニアテクノロジー株式会社社外取締役
1975年 北海道大学工学部卒業

愛媛県出身。1975年、日商岩井(現・双日)入社。長年に渡って海外のエネルギー・資源開発プロジェクトを担当しアジア、中東、アフリカ、米州などの大型開発案件に携わる。海外在住はバーレーン(中東会社1983〜86年)、ニューヨーク(米国会社2001〜2003年/副社長兼営業開発室長)、ロンドン(2006〜2007年/欧州アフリカ・ロシアNIS総支配人)、ドバイ(2007〜2011年/中東アフリカ総支配人)。2013年より北大工学部非常勤講師(資源経済)。

舞台の主役はカレッジ生、あなたです

新渡戸カレッジは、いうまでもなく“カレッジ生が主役”です。カレッジが目指すものの一つとして、学生が主体性をもってカレッジを作って行くことが挙げられます。学校側や我々フェローは、言わば脇役です。皆さんがカレッジに入って、いろいろなプログラムに参加する機会に、自分はこう思う、もっとこうしたいと、様々な感想や意見を持つと思います。それを基にした新しい提案を活かすことができるはずです。そういう学生だからこそ、カレッジに来ているのだと思います。

新渡戸カレッジのようにOBをフェローとして起用している大学は全国で他にはなく、実にユニークな取り組みだと思います。まだ、開設初期の段階として試行錯誤はもちろんありますが、カレッジには創生期の熱い意気込みを感じます。これからは、この枠組みを“長期に継続すること”が大きなテーマです。カレッジ卒業生が、社会に出てから何年か後にフェローとして戻ってくる、そんな良い循環ができれば素晴らしいことです。北大と新渡戸カレッジには、それができる土壌とスピリットがあります。その主役は、カレッジ生のあなたです。

カレッジでは今年度は試験的に、来年度から本格的に、海外インターンシップ・プログラムを導入します。当社の海外拠点でも学生を受け入れる予定ですが、企業や社会とのつながりがフェローを通してますます多層的、複合的になってきました。カレッジ生が、企業の海外現場を直に経験する、すなわち、大学と社会が直結するという点で、4年目に入ったカレッジの存在意義と機能は、確実に拡大しています。

世界で「勝てる人材」とは

最近、大学の世界ランキング云々という記事を見ますと、日本の大学は決してトップレベルではありません。しかしながら私は新渡戸カレッジで、「世界のどこにでも通用する人」を育てたいと思っています。「グローバルリーダー」と言ってもいいのですが、私には「世界で戦い、勝てる人材」のほうがしっくりきます。カレッジ生と年に数回だけ会う私が「育てる」は少々大げさですが、皆さん自身が気づいてくれて、自ら目指してくれることを願っています。

私は企業に入社してその重要性を実感しました。海外ビジネスで不特定多数の相手と競合するとき、参加することに意義があるという「オリンピック精神」は全く意味がありません。他流試合に勝ちぬいて、結果を出さなければプロジェクトを成功に導くことはできません。そんな世界に挑戦するタフな人材を社会は求めています。ではどうしたらそんなことができるのか。言葉で言うのは簡単ですが、私は「徹底すること」だと思っています。徹底してあらゆる方法を探り、全力を尽くし、限界の先まで行ってもまだあきらめない。新渡戸カレッジからそうした人材が育つよう、精一杯支援したいと思っています。

もう一つ、私の実体験から皆さんへアドバイスしたいのは、大学時代の1年や2年の遅れは社会に出てから全く問題にならないということです。新渡戸カレッジは1セメスター以上の長期留学をしてほしいと考えていますが、課題もあります。留年の可能性があることや、ある程度のコスト負担が必要な点から、なかなか簡単に進められないのが現状です。少々乱暴かも知れませんが、浪人や留年によるその程度の遅れを長い人生の中で、さほど気にすることはありません。

ちなみに私は留学ではなく、アジアや大洋州を1年間放浪していました。若いうちに何をどれだけ吸収したかが、その後の人生に大きく影響します。カレッジには海外留学に有利な制度があります。今だからこそぜひ海外に出てほしいと思います。コスト面の支援体制も整っています。せっかくの機会を存分に生かして迷わず進んでください。

フェローの流儀: 人生で大切にしていることは?「白紙に絵を描くように」

私が取り組んできた仕事は、それまでにはない新しいフィールドで、白紙に絵を描くところから始め、実際にプロジェクトを創り上げていくことでした。若いころから長年そういうアプローチをしてきたので、今ではDNAに染みついています。海外には15年ほど赴任しましたが、前任者から引継書をもらった経験はほぼありません。目の前にあるのは白紙のキャンバスです。大きな自由度と広角打法で、プロジェクトに取り組んできました。そんな世界は非常にエキサイティングで恵まれた環境でした。

しかし、創るということの難しさにはいつも思い知らされます。新しい知識と情報を漁り、経験のその先にある先読みの力、洞察力を養うことが必須でした。それがビジネス商戦での戦闘能力の核になるからです。さらに描いた絵が砂上の楼閣にならないよう、足元がしっかりした、構造的に強い事業体制を作ることが命題でした。そのためには、向かう世界を恐れずに前に進んでいくこと。まさに我々北大の精神的バックボーンである“フロンティアスピリット”です。