我々フェローはいつも学生に寄り添い、一緒に考える存在でありたい
プロフィール
島田 元生(しまだ もとお)さん
株式会社ビスキャス顧問
1972年 北海道大学工学部卒業
東京都出身。1972年に古河電気工業株式会社入社。電力技術本部で海外向け電力ケーブル設計に従事。1983~1985年、サウジ・バーレーン電力網プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして赴任。1990~1993年人事部人材育成課長、1999年電力技術部長を経て2001年に株式会社ビスキャス(古河電工とフジクラの合弁会社)社長に就任。2005年に製造部門、国内営業などを統合、常務取締役となる。2008年海外エンジニアリング事業部長、2013年常勤顧問(海外係争担当)、2014年取締役に復帰、2015年より現職。
目標は、なくてもいい
若い人たちに伝えたいのは、「まず海外に出てみよう」ということ。深く考える必要はありません。目標や目的がはっきりしていなくてもいいし、留学でも旅行でもいい。場所もどこでも好きなところへ。とにかく一度、日本を出てみてほしい。すると自分に足りないものが一気に明らかになります。そこから将来の目標や方向性が見える場合もありますし、そもそも目標とは変わっていくものです。目標通りに進むことはありませんから、どんどん変えて構わないのです。
私自身は学生時代、ローカル志向で海外に出たことがありませんでした。入社後初めて韓国へ長期出張し、カルチャーショックを受けました。準備不足を悔やみ、語学力不足を思い知り、いい経験でした。その後サウジアラビアやバーレーンに約2年赴任し、さらに強烈なカルチャーショックを受けました。その時は事前に準備していたつもりでしたが、現地では想像を越えることばかり。そのなかで100名を越すチームのプロジェクトを動かすのは大変でした。プロジェクトでトラブルがあったときにラマダン(イスラム教徒の断食月)に重なってなかなか仕事が進まず、宗教の存在の大きさを実感したこともあります。
若い人たちには、そういうショックや現地でないとわからないことを、たくさん経験してほしい。社会人になってからは任務を遂行しなければいけませんが、学生時代はそういう縛りがなく、もっと自由に動けるし、冒険できる。新渡戸カレッジは、そういった世界に通じる一つの入口になると思います。
指導ではなく、ともに学び、考える
新渡戸カレッジで印象的なのは、学生たちが2年生になると急成長し、社会に目を向け始める点です。グループミーティングのテーマを毎回学生が選んでいましたが、1回目は「日本国憲法を考える」、次が「集団的自衛権」、3回目が「消費税の増税」でした。私はもう少し柔らかい話題になるかと思っていたのですが、どれも重要な硬派のテーマで、その真面目な姿勢に好感を持ちました。また、それぞれが調べた内容を発表し意見を交わすのですが、対立意見があっても全否定せず、相手の話を聞いて受け止める姿勢、全体を考えられる柔軟性が素晴らしい。かれらに未来を託せるのは、とても頼もしいと思いました。
グループミーティング前は私も関連書籍を6、7冊は読み、しっかり準備して臨みます。フェローはプロの教員ではないので、教育力を期待されているわけではありません。「様々な経験を積んでいること」、「それを伝えられること」が最大の売りです。そして、「学生に寄り添っていること」がフェローの立場だと考えています。“指導する”のではなく、“ともに学び考える”。これからもそういう存在でありたいと思います。
我々は社会に出てから多くの先輩や学校から様々な恩恵を受けてきました。今度は私のほうから恩返しをする番で、そのためにもフェローは素晴らしい機会をいただいたと思います。何か辛い状況に陥っている学生がいたら、「君だけじゃないよ」と励まし、私にもこんな経験があったと話してあげたい。また、将来学生が困難に直面したとき、「昔こんな話を聞いた」と思い出し、少しでも役に立てばうれしい。失敗もたくさんしましたから、若い人たちに伝えられる知恵はたくさんありますよ。
フェローの流儀: 人生で大切にしていることは?「君ならできる!」
若い人によく言っていますが、私自身もこの言葉に勇気づけられてきました。たとえ目標が高くとも、チャレンジしないのはもったいない。自分もだれかに言ってもらいたいし、頑張っている人に言ってあげたい言葉です。「君」は自分自身にも向けられた言葉なのです。
だれしも迷うことがあり、勇気が出ないときもある。でも、失敗してもいいからまずはトライすることです。失敗すると自分の足りない部分が明確になります。大きな打撃があるかもしれませんが、そのショックから得られるものはとてつもなく大きい。君自身の力を信じて一歩を踏み出しましょう!