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新渡戸カレッジ履修生・修了生、フェロー・メンターからのメッセージです。

好奇心と柔軟性で「T字型人材」に

三村 直己
投稿日: 2023-01-27

プロフィール

三村 直己(みむら なおき)さん   

フリーコンサルタント      
1982年 北海道大学理学部卒業

千葉県千葉市生まれ。北海道大学理学部化学第二学科卒業後、1982年富士通株式会社に入社。半導体事業本部応用技術部海外技術課に配属される。1989年6月から富士通マイクロエレクトロニクスアジア・パシフィックに出向。香港、シンガポールで半導体関連のマーケティングを約6年間担当。帰国後、Flash Memoryを扱う米国AMD社とのジョイントベンチャー事業を経て、2002年から富士通半導体事業本部でFRAMのマーケティングを担当。2008年からは富士通マイクロエレクトロニクス社でBRICsを担当。上海に出向し、台湾の半導体事業も任された。その後も関連会社や転職先で海外営業を統括。2022年4月末にウィンボンド・エレクトロニクス社を退職し、フリーのコンサルタントに。

半導体発展期に海外マーケティングを担当

窮屈だった地元を飛び出したくて、憧れの北海道へ。自分のように北海道大学には全国からいろんな学生が集まってきますから、とにかく人と話す楽しさに目覚めた学生時代でした。専門は物性化学でしたが、「自分は営業がしたいし、海外にも行ってみたい!」と思い、富士通の面接でも海外勤務希望をアピールしました。

80年代に入ったばかりの当時は、世界的にも半導体市場が拡大し、日本メーカーがシェアを伸ばし始めていた時期。最先端の商材が次々と開発されて、その技術的なプロモーションやマーケティング、不具合があった時の対応を海外のお客様に対して行う部門に配属になりました。なかでも入社7年目に担当した香港、そしてシンガポール駐在の6年間は、自分のキャリアの中でも非常に貴重な経験でした。
欧米相手には「日本の半導体はこんなにすごいんです!」という最先端技術のプロモーションに専念していましたが、アジアの市場は量産体制を前提とする価格至上主義。厳しいビジネスの現場に、冷や汗をかいたこともしばしばありました。

スタッフは現地採用で日本人の同僚は数えるほどでしたが、仕事で心がけていたのは対話を重ねること。英語は決して得意ではなく、きっと今の新渡戸カレッジ生の皆さんの方がはるかに堪能だと思います。それでも細かい文法などは気にせずに自分の考えをなんとか伝えようとしましたし、相手の話もしっかり聞く。その努力はしていたように思います。

“overseas”から“global”へ、時代を生き抜く柔軟性

香港・シンガポール時代のアメリカ人上司が、私にとって理想のリーダー像です。その魅力を一言で表すと、ディシジョンが非常に早い人でした。もちろん彼がそうできるだけの実績や経験を持っていたということもありますが、根本的に下の人間が上を頼りにするのは、自分たちではどうにも判断がつかないときですよね。その迷いに応えるためにも、ディシジョンは素早く、明確に。それが上の人間の仕事であると、実践で見せてもらいました。
とは言っても上司も人間ですから時々、朝聞いた指示が夕方には「すまない、あれは変更する」と変わることもありましたが、その変更自体も決断が早いので軌道修正がしやすかった。本当に頼りになる上司でした。

これからの時代は、専門分野の深い知識に加え他の分野にも幅広い知見を持つ「T字型人材」であることがより重要になってくると思います。そういう人材になるには、月並みですが何にでも好奇心を持つこと。
好奇心を持っていろんなことに挑戦していくと、自分が知らないことがたくさん出てきます。それを受け入れる柔軟性もまた、重要です。不慣れなことに挑戦すれば、無論失敗するときもあるでしょう。それでも「こうすると、これくらいのダメージになる」とわかれば、「じゃあ、このダメージを回避すればもっと先に行ける」と楽観的に前に進むことができます。逆に失敗を気にしすぎて、足が止まってしまうのが何よりもったいない。最近の日本は、この楽観的に「やってみる」が少し弱くなってしまったのかなあという印象です。

長らく海外勤務を経験すると、異動の度に所属部署名の頭が“overseas”から“international”に変わり、最後は“global”になったことを思い出します。どれも担当していた業務は同じですが、表記が時代と共に変わっていった。そう考えると今、浸透している“global”ですら一過性の表記に過ぎず、ゆくゆくはスター・ウォーズのように“galaxy”になるかもしれません。
そうした変化に対応できるのも柔軟性があればこそ、です。時代を生き抜いていけるかどうか、最後の鍵は柔軟性。皆さんも、このことは強く心にとめておいてほしいと思います。

フェローの流儀: 出会った仲間を大切に

大学時代の友人もそうですが、仕事でも仲間は非常に大切です。2000年に入ってからBRICSビジネスのマネージメントをすることになった時、私が頼りにしたのは香港・シンガポール時代の元部下たちでした。アジア各地で管理職として活躍する彼らに随分助けてもらいました。人として深めたつきあいには数値化できない価値が宿るのだと改めて実感しました。

新渡戸カレッジも、多様な学部・学科から意欲ある学生たちが集う場です。T字型人材になるためにもぜひここで面白い仲間を作って、その仲間たちを大切にしてほしい。一番の収穫はそれに尽きると思います。