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Messages from Nitobe College Students, Alumni, Fellows, and Mentors.

やってきたことは、あなたを裏切らない

萩野 泉
Post Date: Mar 22, 2021

プロフィール

萩野 泉(はぎの いずみ)さん

株式会社電通クロスブレイン リードマーケティングデータアナリスト
(株式会社電通から出向)
2015年 北海道大学 大学院 保健科学院 後期博士課程修了

長野県生まれ。2005年、北海道大学薬学部総合薬学科入学。2010年、保健科学院に進学。アフリカ大陸中央部のカメルーン共和国でのフィールドワークを経験し、博士(保健科学)を取得。2015年、株式会社電通に入社。購買ログやWEB回遊ログ、意識/価値観アンケートなどのデータ分析に基づき、クライアントのマーケティング意思決定をサポートする業務に従事。2021年1月よりマーケティング戦略立案・データ分析に専門特化した新会社、株式会社電通クロスブレインに出向。

薬学部出身、アフリカ経由のデータサイエンティスト

中学・高校時代は鹿児島で過ごし、北海道に憧れて北海道大学の薬学部に進学しました。北大生協の学生組織委員会に所属して受験生・新入生歓迎イベントなどを企画していたのですが、その活動があまりにも楽しすぎて一年留年してしまいました。留年後はきちんと勉強に励みまして、1年の国試浪人もありつつなんとか薬剤師の資格は取得しています。

学部卒業後の進路を迷っていたときにジャーナリストの松本仁一さんの著書『アフリカを食べる アフリカで寝る』を読んでアフリカの文化に興味がわき、アフリカをフィールドに研究している保健科学院人類生態学研究室に進学、所属しました。カメルーン共和国の熱帯雨林で伝統的な生活を送るピグミー系狩猟採集民Baka族の村に年3、4カ月住み込んで、主に子どもたちを対象としたフィールドワークに没頭する生活を送っていました。

電通入社後はマーケティング関連の部署に配属されました。消費者の商品購入やサービス利用履歴、各種メディアの視聴履歴、CMやタレントさんに抱くイメージなど、さまざまなデータを用いた分析を行い、その結果をもとに企業が次にどう行動するか意思決定できるようにサポートする仕事を主に行ってきました。

ちょっと変わったお仕事もあり、薬剤師資格を活かして社内の新事業であるペットフードの開発にも携わらせてもらいました。どんな経験もムダにはならないなと感じましたね。

ソーシャルディスタンス環境下で見つめる根源欲求

大学生活はもちろんのこと、社会に出ていくと多くの人、ときには宗教や習慣、考え方が異なる相手とも出会うことになります。自分はアフリカというわかりやすい場所でそういう経験をしたのですが、異なる価値観や背景を持つ人たちと出会いの中で、たとえすべてを受け入れられなくても相手を理解することの大切さを感じました。

仕事においても多くのクライアントの方々にお世話になりました。それぞれにご依頼の背景や課題は異なっていましたが、どの案件でも共通していたのは、依頼された分析に留まらず、その分析はなぜ必要なのか?何のためにするのか?と大局観を持ちながらご依頼いただいたことプラスアルファを提案し、新しい発見をお持ち帰りいただけるようにと心掛けていました。

薬剤師の資格を持ち、アフリカで狩猟民族の研究をし、現在はマーケティング・データ分析の仕事をしている……。こう書くと一貫性のないキャリアだと思われるかもしれませんが、「自分の知的好奇心を大切にした」という点はずっと貫いています。

幅広く物事に興味を持ち、そのなかで一つずつやり切っていく。その結果、勉強にしろサークル活動にしろ、「自分はこれをやりました!」というものができればそれがあなたの土台になります。
その後、専門外の進路や新しい分野にチャレンジすることになっても大丈夫。なにがしかの土台を持ち、そこから成長できる力を新渡戸カレッジの皆さんは十分に持っていますし、やってきたことは絶対にあなたを裏切りません。

2020年は皆さんにとっても試練の一年だったと思います。私のフェローゼミでも「ソーシャルディスタンス環境下でZ世代のぼくたちは何をしないといけないか」をテーマとしてみなさんに考えてもらいました。
思いも寄らない形で大学生活が始まり、戸惑いも多い生活を送っている中で、改めて「そもそも自分たちは何がしたくてここにいるのか?」という問いに向き合う。ハードルの高い内容だったと思いますが、まだ10代のゼミ生たちは自分の根源欲求を見つめ、それを言語化し、さらにその欲求を実現するアクションまで考える工程を見事に完走してくれました。

心からの敬意を感じるとともに、新渡戸カレッジ生の持つ高いポテンシャルを改めて実感しました。ゼミ生のみなさんにはこのゼミをやりきった自分自身に胸を張って、前に進んでいってほしいと願っています。

フェローの流儀:絶学無憂、水を楽しむ精神で

「絶学無憂」(ぜつがくむゆう)という言葉があります。学問を断てば、憂い無し。ゆっくりやろうよ、という意味でもありつつ、私はこれを“進歩を止めた瞬間に心配事が無くなる”ととらえ、「つらい」と感じたときこそ自分は成長していると考えるようになりました。逆に「楽しい」だけの状態が続きすぎると、“待てよ、これは自分の既存の知識だけで回していて、新しいことをインプットしていないんじゃないか?”と一度立ち止まるようにしています。

もう一つ「知者は水を楽しむ」という論語の一節も好きです。コミックで知りました(笑)。身につけた知識を活用しながら、水、すなわち流れるような変化を楽しむ。
2021年から新しい会社でスタートを切ることになり、この二つの言葉を改めて心に刻んでいこうと思っています。皆さんも一緒に“水”を楽しんでいきましょう!