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Messages from Nitobe College Students, Alumni, Fellows, and Mentors.

Getting Betterの精神を大切に

横井 成尚
Post Date: Jan 17, 2020

プロフィール

横井 成尚(よこい しげひさ)さん
サッポロビール株式会社 常勤監査役
博士(農学)
1982年 北海道大学農学部卒業

北海道札幌市生まれ。1982年北海道大学農学部卒業後、サッポロビール株式会社に入社。中央研究所、醸造技術研究所、群馬工場、静岡工場、価値創造フロンティア研究所、千葉工場、九州日田工場勤務を経て、2010年から5年間、Sleeman Breweries Ltd. (Canada), President & CEOに着任。2015年取締役執行役員、2019年常勤監査役。2017年静岡大学で博士号(農学)取得。

親子二代で北大生、店頭で販売されるものづくり

私が学んでいた北海道大学農学部農芸化学科応用菌学講座は、父もかつて身を置いていた講座。父は北大卒業後、大手乳製品メーカーに就職し、我が家は小さい頃から道内各地を転々とする転勤家族でした。どの土地に行っても父の会社の牛乳やバターが店頭で販売されており、しかも「大好きだ」と言ってくださるファンがいる…このことは子ども心にも鮮烈に刻まれ、「自分も将来は、お店で売っている商品を作る会社に入りたい!」と思う原体験になりました。

その気持ちを貫き、サッポロビールに入社して38年あまり。2010年から5年間、サッポロがM&Aで傘下に組み入れたカナダのビール会社Sleeman BreweriesにCEOとして着任した経歴があってでしょうか、帰国後、新渡戸カレッジのフェローのお話をいただき、現在に至ります。

北大は半数以上が道外出身者であると聞いており、3年目のフェローゼミでは当社を代表する北海道におけるブランド「サッポロクラシック」から学ぶことをテーマに据えました。工場見学とあわせて工場の技術者や営業、マーケティング担当者からも話を聞き、そこから北海道をさらに住みやすい土地にするための新たな価値創造を考えてもらうゼミを展開しました。

リーダーシップの前にメンバーシップを発揮

“リーダーシップのあるグローバル人材の育成”と聞くと、一足飛びにリーダーを育てることが我々フェローの急務のように思われがちですが、私がまず学生たちに伝えているメッセージは「リーダーシップの前にまずメンバーシップを磨くこと、自分が組織の一メンバーとして力を発揮すること、それが基本中の基本である」ということです。指示待ちの傍観者ではなく、自らすすんで現場に深く参加する姿勢を持ってほしいと考えています。

私がカナダのSleeman Breweriesに着任当時、同社はすでにM&Aから4年近くが経っていました。社内に買収後の企業理念が貼ってあるのですが、どうもそれが現地の従業員に“腹落ち”していない雰囲気を感じました。社員達がどこかで違和感や絵空事・他人事のような感覚を持っていたのだと思います。

そこで思いきって企業理念のバージョンアップを決意し、特にカナダ人幹部たちと現地で徹底的に話し合う場を設けました。今ふり返ると、非常に大きな賭けだったように思います。でもそうやって真剣に熱い議論を交わした結果、出てきた言葉が“Better Beer for All”というビジョンでした。そして“Better Beer”“Better People”“Getting Better”という3つのミッションが生まれ、これらを現在も現地社員達が大切に守り続けています。

どれも簡単な単語を使っているので覚えやすく、やさしい単語が意味する奥深さと純粋な言葉が持つインパクトも十分あります。瞬間的なBestではなく、常にさらなる成長を考えるBetterという単語を用いて、会社が目指す方向性を表現しました。
実際、この新ミッションを現場にローンチしたところ、徐々に会社の空気が変わり、皆が前向きになっていくのがわかりました。気が付くと社員同士のメールにも“Getting Better”の文字が現れるようになったんです。

もし、このとき私が「新しいリーダーなのだからリーダーの好きなようにさせてもらおう」と独善的に動いていたら、無論こういう結果は得られなかったと思います。自分自身も組織のメンバーであり、皆と協働し、皆の力を最大限に引き出すことができてはじめて周囲が認めてくれて、そこに人格と個性が相まって皆から慕われる、皆から支えられるリーダーになっていく。それが私の経験から得たリーダー人財育成論です。人材ではなく人財、なぜならこれから次代のリーダーとなる新渡戸カレッジの皆さんは、日本社会の財産だからです。

フェローの流儀: 人間力を磨いてGetting Better

組織のメンバーとして力を発揮するには、学生時代に基本となる人間力を磨くことが大切です。専門的な知識や技術は社会に入ってからも十分身につけることができます。もちろん学業は大切ですが、それに加えて部活やサークルやアルバイト、学外のイベントなどに積極的に参加して、友情を育んだり、恋愛を経験したり、その中で辛い挫折も沢山味わって、メンタル的にもフィジカル的にも簡単に折れない免疫力を身につけていただきたいですね。

そして、つねにGetting  Betterの精神で。
Getting Betterは一人の人間として私も生涯、心に留めていくであろう言葉です。