総長からのメッセージ

「光」は「北」から、「北」から「世界」へ

新渡戸カレッジは、国際的な感性を持った豊かな人間性をはぐくむための学部横断的な特別教育プログラムです。北海道大学の教育プログラムの中でも、異彩を放つものであり、これまで、高い評価を得てきました。2013年に学部生を対象とした「新渡戸カレッジ」を、2015年に大学院生を対象とした「新渡戸スクール」を開校し、さらに2019年よりは、両者を統合し、新生「新渡戸カレッジ」として、6年一貫のプログラムを実施しているところです。

北海道大学は、1876年の札幌農学校設立以来、その歴史の中で「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」という教育研究に関わる四つの基本理念を掲げるとともに、今日まで学問の自主、自由の精神を培ってきました。その中、札幌農学校の第二期生である新渡戸稲造は、豊かな精神性と真摯な活動により、本学の目指す人材育成において一つの規範とすべき存在といえます。

この「新渡戸カレッジ」では、新渡戸稲造から学ぶべき精神として、①深い倫理性に基づいた品位ある「自律的な個人の育成」、②それぞれの文化的・社会的背景に根ざしたアイデンティティを確立し、互いに尊重し合う「国際精神の涵養」を基本とし、さらには、③相互に親しく交わる「国際的教育の実現」を掲げ、この三つを教育上の理念とします。

新渡戸カレッジにおいては、本学の基本理念と新渡戸稲造から学ぶべき精神に基づきつつ、各々の学問分野における専門性を重視するとともに、グローバルなコミュニケーションツールとしての英語力、リーダーシップ・チームワーク力、多文化状況の中での問題解決力を身につけること、さらには、それぞれの文化的・社会的背景に根ざしたアイデンティティを確立することを目標としています。また、本学同窓生等からなる新渡戸カレッジメンターおよびフェローによるグローバルなキャリア形成支援教育により、異なる文化・社会の架け橋となる人間の育成をめざしています。

2020年当初から、私達の日常が大きく揺らいでいます。コロナ禍の中で、国際化、国境を越えた人と人の繋がりは、厳しい試練の時期を迎えており、出口はまだ、見えません。

しかし、私達は、この試練を乗り越え、さらに力強い人と人との絆を取り戻すと確信しています。暗闇の中だからこそ、「光」がはっきりと見えるものです。このコロナ禍の中でも、人と人は国境を越えて繋がりを求めるものであり、オンラインなどの新しい日常「ニューノーマル」を築いて、「光」の繋がりを一層強めています。

本学の総長メッセージで、私は、「光」は「北」から、「北」から「世界」へという表現を使っています。新渡戸カレッジは、その「光」を放つ重要な教育プログラムであると確信します。

北海道大学総長 寳金 清博