応援メッセージ

社会が求める人材——グローバルリーダーへの道——

プロフィール

杉江和男さん
DIC株式会社相談役、サッポロホールディングス株式会社社外監査役
1970年 北海道大学大学院工学研究科修士課程修了

1970年に大日本インキ化学工業株式会社(現DIC株式会社)に入社、技術、生産、マーケティング等に従事。米国駐在、経営企画室長、副社長、社長、会長を経て2015年より相談役に就任。入社以来30年間、技術、製造、営業、企画など9部署で活躍し、印刷インキの老舗を、経営ビジョン「Color & Comfort by Chemistry」の下、成長企業にするため経営改革を率先して行う。現在は東京都、公益財団法人、NPO等でキャリア教育や人材育成、女性の活躍推進に携わる。

2015年5月10日に行った「新渡戸カレッジ学内合宿」の特別講演にてお話しいただきました。

何のために勉強するのか

%e6%9d%89%e6%b1%9f%e3%81%95%e3%82%932新渡戸カレッジ入校おめでとうございます。皆さんは今まさにグローバルリーダーへの第一歩を踏み出したところです。社会はどんな人材を求めているか、そのために何をすれば良いのかをお話ししたいと思います。
以前、経済同友会で、学生を採用する際に重視する能力についてアンケートをとったところ、多かった回答は、「コミュニケーション力」、「自己PR・分析力」、「論理的思考力」などでした。また、重視する活動は1位が「サークル活動」、2位が「アルバイト」、3位が「海外経験」でした。皆さんはサークルに入るときに自分の意思でどこに入るか決めると思いますが、そういった自主性や積極性を企業は評価します。また、サークルなどを継続してきたことは、仲間とコミュニケーションをとりながら活動したということであり、企業は学生時代の社会経験を重視する、という結果が出ています。

では、皆さんは何のために勉強するのか、考えたことはありますか。
特に教養科目などは何の役に立つだろうと感じると思いますが、きちんと意味があります。教養科目、専門科目、外国語などの「教科学習」を通して、皆さんは判断力や表現力、論理的な思考力など、社会で要求される能力を間接的に養っているのです。そして、グループミーティングやサークル、ボランティアなどの「自主学習」によって、コミュニケーション力や協調性、判断力などを養っています。
どこの社会でもそうですが、組織には「指示されてもできない」という人が、全体の約2割存在しています。そして、「指示されればできる(前例があればできる)人」が約6割、「指示されなくてもできる人」が約2割という割合になっています。皆さんは将来、「指示されなくてもできる人」になってください。そのポテンシャルは十分持っています。問題は、そのポテンシャルをどういう形で表に出すかです。そのためには、自分で考え、自分の考えを発言し、さらに考え方が違う多様な人々を理解し、尊重した上で、最終的にどのように進んだら良いかを見出していくことが必要です。

そうした観点でみると、新渡戸カレッジで学ぶことはまさに最高のチャンスであり、最高の環境といえます。様々なフェローと接するチャンスもありますから、ぜひフェローの豊富な引き出しから、たくさんの経験や知識を皆さんの力で引っ張り出し、どんどん身につけていってください。

企業の価値と、働く意義

経済学者のピーター・ドラッカーが、私たちの仕事は何でしょう、顧客は誰でしょう、その顧客は何に価値を見出しているでしょう、といった言葉を残していますが、皆さんも自分の仕事は何か、顧客は誰かを考えてみてください。皆さんが高等教育を受けて社会に出たあと、顧客となるのは世界の人々です。そこで、日本を含めた世界の人々が、今の時代に何を価値としているのか、常に考える習慣をつけるとよいと思います。

ここで私たちの会社について少しお話ししましょう。大日本インキ化学工業は1908年に誕生した会社です。印刷インキは15世紀に開発され、550年ほど成長を続けてきたので、我が社も順調に成長して来ました。しかし、20年ほど前から先進国における印刷インキの需要が減り始めました。IT化の影響で、新聞購読数が減るなど、紙の印刷が急激に減少してきたのです。
そこで、先のドラッカーの言葉にもつながりますが、私たちは会社の価値は何であるかを考えました。印刷インキは従来、紙に印刷することで情報を与えてきましたが、現代の情報を与える手段は紙だけにはとどまりません。そのため、私たちはIT分野を事業に取り込むことにしました。現在、スマートフォンやテレビなどの液晶に使われる緑色の顔料の約80%を、我が社で製造しています。特殊な顔料を開発し特許を申請したので、他社が同じものを作ることはできません。
それから、皆さんもよくご存じの青いアイスキャンディーに使われる色素も我が社の製品で、スピルリナという健康食品から抽出しています。こういった食品分野でも研究開発を行い、事業を変化させてきました。皆さんも時代の変化に対応し、新しい変化を実現するアイディアを創出できる人材になって欲しいと思います。

皆さんは、何のために働くのか考えたことはありますか?
会社に勤めると、まずは決まった仕事を命じられます。皆さんはその仕事をこなし、給料という報酬を得ます。その後、入社1年くらいすると、こうすれば生産プロセスを改善できる、サービスを改善できる、といった改善案について考えるようになります。それを会社に提案することで、会社は新たな価値を生み出すことにつながります。すると、以前より責任ある役割を担うようになり、人を動かす立場になってきます。
さらに経験を積むと、新商品を開発したり、新しいサービスを開発したり、さらに新しい価値を生み出すことが可能になり、会社にとって非常に有益な人材となります。そうなると、リーダーとしての役割を担うようになります。このように、働く人と、会社がwin-winの関係になることで、社会は成り立っています。一方だけがwinでは、社会も個人も幸せにはならず、継続性がありません。こうした関係を築くことが、私たちが働く意義であり、役割ではないかと思います。

今日からできること

%e6%9d%89%e6%b1%9f%e3%81%95%e3%82%933現在、企業が大学教育に期待することとして、人格的要素では、対人コミュニケーション能力や自立心の養成、社会人としてのマナーが挙げられています。学力的要素では、論理的思考能力や問題解決能力の養成、専門的な学問教育、ディベート、プレゼンテーション能力の訓練などが期待され、経験的要素では、海外留学など国際交流活動の機会提供、クラブ・サークル活動などの課外活動、ボランティア等の社会活動が求められています。
こうした様々な要素は、会社に入ってからでも身につけられるはず、と思うかもしれませんが、これらは少しずつ積み重ねなければなかなか身につきません。語学の学習と同じで、毎日継続しなければ難しいのです。これらの人間として大事な要素を、じっくりと身につける機会は学生時代がほぼ最後となります。皆さんは、今その最終段階に来ていることを意識して欲しいと思います。

最後に、皆さんに今日から主体的に行っていただきたいことをまとめました。
(1)教養を学ぶ(判断力・思考力・表現力を養成)
(2)何事もなぜか?を考え、理解する習慣をつける
(3)「社会で必要な力」と「自分の力」のギャップを自覚し、その間を埋める行動をする
(4)Active learningを常に意識する
(5)失敗(成功)の経験が人を創る
これらは、心がけ次第ですぐに実行できます。学生のうちから、社会に出ること意識して自ら学ぶマインドを持って行動することで、必ずグローバルリーダーとしての資質が磨かれます。これは昨年、私がラフェイ先生に教えていただいたのですが、英語が上達する方法は第1に「自分の考えを持つこと」、次に「それを発言する勇気を持つこと」だそうです。日本語で自分の考えを持っていないのに、それを英語で表現することなどできません。常に自ら考え、勇気を持って行動することです。
皆さん、ぜひ未来のグローバルリーダーに向けて前進してください。期待しています。